「11.副詞・副詞句」へ 目次へ 主要目次へ[補説§11]
§11.1 益岡・田窪 1992『基礎日本語文法』から §11.2 副詞のリスト §11.3 ロザリンド・ソーントーン1983「形容詞の連用形のいわゆる副詞的用法」§11.1 益岡・田窪『基礎日本語文法』から
◇益岡・田窪『基礎日本語文法』の副詞の章から、副詞の例を抜き書きしたものを下に のせます。具体的な副詞の例として。 附録:中右実の論文から文副詞 益岡・田窪『基礎日本語文法』くろしお出版 ・述語の修飾 様態 ゆっくり 堂々と 軽々と 一気に いやいや こわごわ 擬態語 わざと わざわざ あえて うっかり 思わず 程度 少し 大変 おそろしく わりに 最も いちばん さらに・・・ あまり さほど たいして ぜんぜん まったく さっぱり 少しも ちっとも 量 たっぷり すこし あまり 少しの時間 だいたい おおよそ ほぼ あらかた ほとんど ほとんど全員 テンス・アスペクト テンス かつて いずれ いまに もうすぐ これから 先ほど のちほど アスペクト いまにも すでに もう とっくに ちょうど まだ ずっと いぜん もはや しだいに だんだん じょじょに ますます とうとう ついに ようやく やっと すぐに ただちに たちまち いつしか やがて まもなく ほどなく そのうち しばらく いよいよ あらかじめ まえもって かねてから かねがね 突然 いきなり ひとまず いったん とりあえず さしあたり はじめて まず ふたたび また いつも きまって 常に しじゅう たえず たいてい しばしば よく たびたび しきりに ときに ときどき たまに めったに あまり ぜんぜん まったく ちっとも ほとんど ・文修飾 陳述 疑問と いったい はたして 否定と 決して 必ずしも とても とうてい 依頼・命令・願望 ぜひ なんとか どうか どうぞ 概言・確言 たぶん おそらく さぞ まず どうも どうやら きっと かならず 絶対 確か まさか よもや 伝聞 何でも 比況 まるで あたかも さも 感動 なんと なんて 従属節 条件・譲歩 もし 万一 かりに たとえ いくら いかに 評価 当然 あいにく さいわい もちろん むろん たまたま 偶然 発言 実は 実際は いわば 例えば 要は 概して 総じて その他 特に ことに 単に (限定) やはり せっかく せめて さすが (ある種の評価) [文の修飾語] 形容詞の連用形 概言・確言のムードと 確かに 明らかに 事柄に対する評価 珍しく(も) 不思議に(も) 奇妙にも 惜しくも 皮肉にも 残念にも 動詞の主体の評価 賢明にも 親切にも 大胆にも 勇敢にも 生意気にも 愚かにも 文修飾副詞相当句 概言・確言のムードと(陳述の副詞に相当) まちがいなく 疑いもなく もしかすると ひょっとすると 事柄に対する評価(評価の副詞に相当) 嬉しい/有り難い/幸いな/驚いた ことに(は) 運悪く 発言の態度を表す(発言の副詞に相当) 正直言って 率直に言って 実を言えば 本当のところ 要するに ▽副詞の分類というのは、難しいものだと思います。 上の分類では、「様態」というところにかなりいろいろな性質のものが入りそうです。 「アスペクト」というところも、かなり広い分類基準のように思います。 最後の「その他」は「限定」と「ある種の評価」となっていますが、それ以外にも ありそうです。 次のような語はどこに入るのでしょうか。 とにかく ともかく とかく なにしろ どうも なにぶん なるべく なるほど いがいに あんがい おもいがけなく なんと なんて どうせ かえって むしろ いっそ だいいち どうにか どうやら どうしても(ない) それぞれ、上の分類のどこかに入るのか、それとも新しい類となるのか。 分類というのは、そもそも何のためにするのか、という問題もあります。 似たものを集め、全体の見通しをよくするため、ということが一つ。 その分類基準を考えることで、全体の「構造・体系」を考える手がかりにすること。 副詞の意味用法の体系というのは、どういうものでしょうか。 ◇次は中右実の論文から 「文副詞」の類です。 中右実「文副詞の比較」 『 』 命題の外側にある文副詞の主要なタイプ 1 価値判断の副詞 運悪く、あいにく、幸いにも、不幸にして、うれしいことに、妙なことに、 驚いたことに、不思議なもので、残念ながら、当然のことながら、お気の毒 ですが、信じがたいことだが、悲しいかな 2 真偽判断の副詞 おそらく、たぶん、もちろん、むろん、きっと、必ず、定めし、さぞ、確か、 確かに、明らかに、思うに、考えるに、つらつらおもんみるに、疑いもなく、 ひょっとして、もしかすると、一見(したところ)、ねがわくは、私の見る ところ(では)、私の知る限り 3 発話行為の副詞 ついでながら、ちなみに、要するに、例えば、率直に言って、本当のところ、 つまりは、いわば、言ってみれば、言うなれば、どちらかと言えば、内輪の 話だが、話は違いますが、おおぴらには言えないが、ちょっとおうかがいし ますが、恐れ入りますが、ものは相談だが、改めて言うまでもなく 4 領域指定の副詞 建て前としては、表向きは、名目上は、もとをただせば、根本的には、基本 的には、理想を言えば、理屈を言えば、原理上、定義上 (中右は、三上章の研究を出発点にしていると思われます。三上の分類の「先触れ・ 約束的・発言」は初めの三つに重なります)§11.2 副詞のリスト
副詞のリストを作ってみたくなりました。いわゆる副詞のほかに、イ形容詞・ナ形容詞の 「連用形」も適当に入れたリストです。国研の分類語彙表(旧版)の分類によります。 『日本語教育のための基本語彙調査』(国立国語研究所)から 3. 相の類・抽象的関係 3.100 こんなに そんなに あんなに どんなに こう そう ああ どう いかが それぞれ おもに 重要に 特に ほかに 別に 3.101 本当に 正しく 当然 あたりまえに 3.100 なぜ どうして 3.111 直接に 間接に いっしょに 互いに 同じに 等しく 反対に 絶対に 3.113 ちゃんと きちんと 3.114 ちょうど まるで 3.120 ちっとも とても どうしても なかなか 全然 決して 絶対 に ほとんど 珍しく 3.121 絶対 に 必ず 3.123 やさしく 便利に 無理に むずかしく 3.130 簡単に 複雑に いろいろ に 3.131 普通 に 一般に 非常に 3.132 特別 に 特に 変に おかしく 3.133 よろしく よく 悪く 結構 適当に 3.134 安全に 無事に あぶなく 立派に 素晴らしく 3.14 強く 弱く 激しく ひどく しっかり 3.15 さかんに どんどん 3.160 いつも 常に ふだん 度々 よく 時々 たま しばらく 3.161 すぐ 早速 やがて だんだん 3.162 急に 突然 また 久しぶり 毎日 毎週 毎月 毎年 3.164 このごろ さっき 3.165 まだ もう とうとう 遂に 結局 ようやく やっと また はじめて まず 3.166 若く 早く 新しく 古く 3.167 もと 3.182 丸く 四角く/に 鋭く たいらに 滑らかに まっすぐ 3.192 長く 短く 高く 低く 深く 浅く 遠く 近く 広く 狭く 厚く 薄く 濃く 太く 細く 大きく 小さく 細かく 3.193 重く 軽く 3.194 速く 遅く ゆっくり 突然 3.195 多く たくさん いっぱい 少なく 少し わずか ちょっと 安く 高く 3.198 みんな すべて すっかり 一般に いちおう 3.119 全く 完全に 十分に なるべく 3.119 およそ 大抵 大体 ほとんど 最も 一番 もう ずっと 一層 ますます 大分(ダイブ・ダイブン) 随分 かなり ちょうど 大変 あまり 大して 3.3 精神および行為 3.300 うっかり ぼんやり びっくり 眠く かゆく 痛く 3.301 楽に 楽しく 嬉しく 愉快に 面白く おかしく つまらなく 苦しく 辛く さびしく 悲しく こわく 恐ろしく がっかり 恥ずかしく 欲しく 惜しく 悔しく 残念に ありがたく 3.302 好きに きらいに いやに 憎く なつかしく うらやましく 親しく かわいく かわいそうに 気の毒に 3.303 にこにこ (擬態語多数) 3.304 賢く 利口に 3.305 上手に 下手に うまく まずく 3.306 詳しく 確かに 確実に 正確に はっきり 不思議に 案外 3.31 うるさく やかましく 3.330 有名に 上品に つまらなく はでに じみに 3.331 仕合わせに 幸福に 不幸に 無事に 3.332 忙しく 3.335 めでたく 3.341 偉く ずるく 3.342 正直に まじめに 3.344 平気に 3.345 優しく おとなしく 勇ましく 3.346 せっかく わざわざ 3.347 熱心に 一生懸命に 3.360 公平に 平等に 3.368 丁寧に 失礼に きびしく 親切に 3.37 大切に 大事に 重要に つまらなく 便利に 不便に むだに 貧しく 贅沢に 賑やかに 安く 3.5 自然現象 3.501 明るく 暗く はっきり 3.502 白く 黒く 赤く 黄色く 青く 美しく きれいに 3.503 静かに 高く 低く やかましく うるさく 3.504 臭く 3.505 おいしく うまく まずく 甘く すっぱく 辛く 苦く 渋く 3.506 汚なく 堅く 軟(柔)らかく/に 濃く 薄く 3.515 熱く 暑く 蒸し暑く 暖かく/に ぬるく 涼しく 冷たく 寒く 3.584 健康に 丈夫に なまに 4.その他 4.311 必ず きっと もちろん たぶん 4.312 とにかく どうも かえって 4.313 なるほど やはり 4.314 どうか どうぞ ぜひ 4.315 もし たとえ (今後、もっと語数を増やすつもりです)§11.3 ロザリンド・ソーントーン
◇形容詞の連用形が副詞となった場合の用法について、ソーントンの論文のノートを 下にのせます。例を並べただけなのでわかりにくいかもしれませんが、参考として。 ロザリンド・ソーントーン1983「形容詞の連用形のいわゆる副詞的用法」 『日本語学』10月号明治書院 ・「しかた」の機能 泰子は美しく振る舞う 泰子の振る舞い方が美しい NのVしかたがA 硝子戸が激しく音を立てている 音の立て方が激しい 路面が雨でひどく濡れている 大きく弾む 小さく呻く 軟らかく抑える うすく閉じていた目を 目の閉じ方がうすい ? うまく行かない例 バッグを軽く持つ 堅く手を揃える 若い女がいさましく盤台を洗う 行儀悪く両手を広げてのびをする おとなしく座っていた 座り方がおとなしい? (状態) 終わりまで忍耐強く聞いてしまった 心がさびしく青ざめてくる 感情形容詞 ・結果の機能 「しかた」テストの変形が不自然な形容詞の一つ 変質 「ナッタ」のテスト 船体を白く塗った Nが船体を塗って、それが白くなった 背が平たくつぶれて 大きく成長している子供たち 爪を長く伸ばす 短く刈り上げた髪 なすが柔らかくゆであがる 卵白をかたく泡立てる 創造 「シタ」のテスト 仏像の本尊を大きく造って 仏像の本尊を造って大きくした ?? ローマ字で大きく刻む パンは缶のふたで丸く抜く 「連体修飾」のテスト 大きい仏像の本尊を造って 「カタチニ」のテスト パンを丸い形に抜く 分裂 「シタ」「カタチニ」のテスト 魚を細く切った 荒くほぐしておく ごまを荒くする パンは小さく切った 部分変化 「ナッタ」「シタ」テストは不自然 皮を丸く切り取る 白く染め抜いたのれん 位置の変化 「トコロ/マデ」のテスト 翼を高くかかげた 高いトコロニ/マデかかげた 配列 大きく風呂敷きを広げて ヘビが長くのびていた 毛布を長く敷いて 写真が大きく載っている 雪が厚く重なる (複数) りんごを丸く並べる 魚を小さく盛り付ける 五人が四角く座る 一時的変化 「ナッタ」は不自然 瞼を大きく見開いて 唇を丸く開けて 目が細くすぼまり 「こと、広汎なものごとの変化」 事態は悪く展開せられた 清々しく洗い清められた状態 言葉が心身に消しがたく彫り付けられる 母の顔は醜く歪んでいた (「しかた」の機能も) 皮膚が美しく染まった 〃 茶を濃く煮出す 香ばしく焙られた茶の葉 においが部屋中にくさく広がった 車が角をやかましく曲がった ・内容の機能 発話 親しく話す しかた 楽しく語り合った 人から悪く言われる 内容 思考 恨めしく思う 考える、見る、見える、眺める 恨めしいと思う 興味深く観察する 興味深いと思って観察する ? なまなましく思い浮かべる 別の種類 感覚 態度を意地悪く感じた 〜と感じる 表情は明るく見えた 青くちらちら映っていた ・並列の機能 目が大きく澄んでいる 目が澄んでいて大きい 動詞+て 形容詞 大きい目が澄んでいる 連体修飾 目が大きくて澄んでいる 〜くて 目が細くつり上がっている 手が細く黒ずんでいて 水は薄白くよどんでいる 顔は黄色くむくんで 「11.副詞・副詞句」へ 目次へ 主要目次へ