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[おわび:この「補説」は、長い間、中身がないままになっていました。
下の村木論文紹介をコピーしたつもりが、何かの間違いで保存しそこなった
ようです。
むなしくここをのぞいてみたことのある方にお詫びします。]
補説§52
§52.1 村木論文:「地図を頼りに」
§52.2 寺村論文:「「付帯状況」表現の成立の条件
§52.1 村木論文:「地図を頼りに」
村木新次郎の論文の用例をコピーしたものです。よく考えられた分類と、それぞれ
に多くの実例をまとめた、すぐれた研究だと思います。
村木新次郎1983「「地図をたよりに、人をたずねる」という言いかた」
1991「形式動詞の脱落」『日本語動詞の諸相』
状況的成分
時間 機会、きっかけ、しお、前、目前、境、最後...
空間 前、背景、中心、舞台、本拠(地)、とりで、会場...
限界・焦点 最高、頂点、重点、主眼、主調...
基準・根拠 基準、基本、軸、もと、よりどころ、たより、手がかり
理由 理由、口実、名目...
目的 目的、目標、ターゲット、目途、めあて...
付帯状況 資格 所持 排除
補語成分 手段 相手 内容
その他
時間
冬を前に 締め切りを目前に ある瞬間を境に
先生になったのをきっかけに これを機に これを機会に
〜に入るのを契機に それをしほに 第一次提訴を皮切りに
市民会館をふり出しに 〜戦をトップに 中前安打を口火に
自然食をスタートに 講演会を開いたのを手始めに 中一を頭に
事件を発端に ベルを合図に 電話を最後に これを突破口に
空間
新宿を舞台に 大学を会場に 海を背景に 百人を前に挨拶
湖をバックに 駅を基点に 広場を出発点に 関東を中心に
そこを根城に 大学を本拠に
限界・焦点
十五分遅れたのを最高に 50年度の40%を頂点に
79年度をピークに 6月調査の46%をどん底に
三島や井上靖を下限に 巨人・阪神戦をヤマ場に
住民のパニック防止を重点に いないかどうかをポイントに
日本椿を主体に 全体がブルーを主調にまとめられ
祖国愛を基調に 福祉の確立を主眼に
原水協を筆頭に 黒モヨウを第一に
基準・根拠
何を基準に イメージをもとに 体験を礎に
友好条約を基盤に 高原をベースに この政策を基本に
同性愛を軸に カスティリア語を核に 持ち家対策を中核に
この仮説を柱に 需要を支えに 政府追求を足がかりに
答申をたたき台に 事実を手がかりに 二塁打を足場に
サミットを踏み台に 此を土台に 市民の力を最後のよりどころに
アメリカを下敷きに 独立させたものを母体に 判決を根拠に
証言をたよりに こうした事情を背景に 看板をもとでに
地縁を手づるに 土地を担保に 年金を味方に
松沼兄弟を両輪に この行事をローラーに サミットをバネに
信頼をテコに 輸出を牽引車に 苦しさをカテに
決議を盾に 合理化を前提に 方式の順守を条件に [条件]
チベット文字をお手本に アメリカの辞典を原典に
これを先例に 候補作品を原則に 娘同士の縁をつてに
理由
経営不振を理由に 借金を苦に 大使襲撃を口実に
一律運賃制の原則をたてに 若返りを名目に
目的
日英協定などを目的に 五十年度を目標に 中ソをターゲットに
三月の国会提出をメドに ママを目当てに 奨学金をあてに
眠ることだけを望みに 昨年妥結実績を目安に
女性層をねらい打ちに 娘を鏡に
付帯状況
資格
舞台女優を母に生まれた 妻を助手に治療に当たっている
泥棒を職業に酒を飲み、寝ている 父親を家庭教師に猛勉
法案を人質に揺さぶり 一人の女性を主人公に
作家をゲスト探偵に 最高記録を手みやげに帰国した
苦悩をタテ糸に、純愛をヨコ糸に、物語が展開する
所持
切符を手に 遺影を胸に 期待を背に もうけを懐に
排除
〜ことを抜きに 政界をよそに 〜のをしり目に
補語成分
手段
「世界の平和」を武器に迫ってくる 刺身を肴に飲む
マリファナをエサに引き入れ 漢方薬をタネに誘惑した
絵ころがしを手みやげにポストについた
資料を助けに全貌を再現する プラスチックを素材に
アメリカ映画をテキストに英語を勉強した バイオリンを伴奏に歌う
木を材料に民芸品を作る 脱脂乳を主原料に作った
腕を枕に眠る 書籍を教材に日本語を学ぶ
相手
暴力団を相手に麻薬の仲買人をやる 先生を対象に研修制度を始める
内容
青春をテーマに 開かれた外交をキャッチフレーズに
反ベトナムを公約数に 会社再建を錦のみ旗に
「 」をスローガンに 「 」をモットーに
研究を旗印に 一組の夫婦を例に タイを例外に
「 」を話題に 「 」を合い言葉に
§52.2 寺村秀夫「「付帯状況」表現の成立の条件」
寺村秀夫 1983「「付帯状況」表現の成立の条件」『寺村秀夫論文集機
寺村は村木の論文を受けて、
村木氏の観察は、相当な量の実例を踏まえた包括的なもので、日本語教育の面から
も非常に参考になる。包括的というのは、今後誰がこの種の例を集めたとしても、そ
の例は村木氏の分類したいくつかの定型のどれかに入るだろうということである。実
際例の観察は、もうこれ以上必要がないとさえいってよいだろう。しかし、包括的で
あることは、同時にこの構文の成立の条件を充分に一般化したということではない。
たとえば、包括的な類型の記述は、必ずしも非文法的な表現がどうして非文法的であ
るのかの説明にはならない。
(p.118-119)
と述べ、以下、村木の論を紹介した後に、自分の説を展開しています。
「XヲYニ、S」は、という事態を報ずると共に、それに付帯的に、「そのSのYがX
である」ことを述べる(実際には先触れ的にの述語に先立って述べる)言い方である。
(p.124)
日本人に、「XヲYニ」のXとYを具体的な名詞で示し、後を意味が通じるように続け
てくれというと、驚くほど似通ったSが出てくる。(外国人学習者について同じテストを
試みると違いがはっきり現れる。)
それは、X、Y、Sという三つの項の間に、上に述べたような意味関係が存在すること
を日本人が(無意識に)知っていることを示している。
(p.124)
「XヲYニ」は、上に述べたような条件に加えて、「XヲYニスル」と言えるようなも
のでなければならないようである。(この言い方は、しかし、「「XヲYニスル」の「ス
ル」を省略するとこの種の「XヲYニ」ができる」という言い方とは同じではない。)
(p.125)
以上、「XヲYニS」という構文について、それを付帯状況の表現の一つの型とし、そ
の成立の条件として、
()「XがSのYだ」という関係が潜在すること、
() Yが帰属性の名詞であること、
() Sが(典型的には)意図的な行為であること、
をあげた。しかし、これは文法的な条件であって、これだけではこの構文は成立しない。
それには表現意図が必要である。この型の付帯状況の表現は、構文的には付け足し的なも
のであるが、ある種の「・・・・・ナガラ」「・・・・・ママ」「・・・・・シテ」や、ある種の連体節
と同じく、話し手がわざわざそれを付け加える何らかの動機が背後にあるのが常である。
そのいろいろな動機に共通するのは、前にも述べたように、その情報を付け加えることに
よって、(構文的な)主要部分がそれに照らし合わされて特別の意味を帯びる、そのこと
を狙ったものだという点であろう。英語の関係節や「with 句」にもそれは通ずる問題で
あろうと思われる。
(p.125-126)
▽「地図を頼りに人を訪ねた」 特別の意味とは? 大変だったということ?
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