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補説§58
§58.1 希望・意志・疑いなどの「引用動詞」
§58.2
§58.1 希望・意志・疑いなどの「引用動詞」
「〜と 動詞」の形で、「〜」のところに希望や意志の表現をとる動詞があります。
どのような動詞がとりうるのか、例文を考えてみました。
おそらく誰かが研究しているのでしょうが、不勉強で知りません。
もともとは、小泉保の『日本語の格と文型』(2007 大修館)で示されていたものです。
引用というと、藤田保幸の厚い本をまず調べなければなりません。今度見てみます。
1 ○シヨウト ×スルト
1-1 意志
日本語学習者がよく間違えるものです。「〜しようと V」と言いたいときに、「〜する
と V」と言ってしまいがちです。
例えば、「私は〜と思う」の場合、話し手の意志を表すには「〜しようと思う」が使われ
ます。
私は日本に留学しようと思います。
?私は日本に留学すると思います。
将来のあまり確かでない予想を述べるのなら、「〜すると思う」を使うのですが、言いた
いことが自分の意志である場合は、「〜しようと思う」でなければなりません。
第三者の場合は、
彼は日本に留学すると思います。
というと、「私は〜と思う」の中に「彼が日本に留学する」が入った形になります。
「彼」の意志を言うなら、
彼は日本に留学しようと思っています。
となり、この「思っている」の主体は「彼」です。
いくつかの動詞は、そもそも「〜すると V」という形をとれません。
×私は/彼女は 学位をとると努力します。 (もちろん「条件のト」ではない)
彼女は学位をとろうと毎日努力しています。
工場の担当者はミスをなくそうと努めて/苦心して います。(×なくすと)
何とか満点を取ろうと頑張りました。(×とると)
少しでも省エネをしようと心掛けているんですが。(×すると)
ただし、次のようにすると、言えるようです。
何とか満点を取る、と頑張りました。
これは、
「何とか満点を取る!」と頑張りました。
のような直接引用になっているのではないかと思います。
「決心する」はどちらもあるようです。このような動詞は他にもあるでしょうか。
私は学位をとると決心した。
私は学位をとろうと決心した。
1-2 勧誘
いっしょに行こうと誘った/呼びかけた。
×いっしょに行くと誘った/呼びかけた。 (「〜行く?」ではなく)
いっしょにやろうと勧めた。
×いっしょにやると勧めた。
勧誘には「〜しないかと」の形もあります。
うちの桜を見に来ないかと誘ってみた。
これを、
うちの桜を見に来るかと誘ってみた。
とすると、引用節の中は単なる疑問文のように感じます。
2 ○シタイト ×スルト
「〜したいと」が言えて「〜すると」で言えない動詞があります。「〜することを」で言
える場合があります。
ぜひ留学したいと望んでいます。
×留学すると望んでいます。
cf. 留学することを望んでいます。
私もやってみたいと考えています。
?私もやってみると考えています。
シテホシイト
両親が/に 長生きしてほしいと願っている。
×両親が長生きすると願っている。
cf. 両親が長生きすることを願っている。
3 ○シヨウカト ○スルカト ×スルト
「〜しようかと V」という形をとる動詞があります。
「〜するかと V」でも言えます。「〜すると V」という形では言えません。
就職しようか(進学しようか)と悩む/迷う
やっぱり就職しようか悩んでいます。
就職するかと悩む
×就職すると悩む/迷う
休暇をとろうかと考えています。
そろそろ休暇をとるかと考えています。 トは省略できない
?私は就職すると考えます
「思う」はなぜか「するかと」では違ってしまいます。なぜでしょうか?
帰ろうかと思う
×帰るかと思う
「そろそろ帰るか」と思った。
4 ○スルノデハナイカト スルカト ×スルト
誰かいる/何かする のではないかと疑った。
?誰かいるかと疑った。
×何かするかと疑った。
「〜するのかと」
誰かいるのかと疑った。
何かするのかと疑った。
うそを言っているのではないかと疑った。
間違っているのではないかと恐れた/心配した。
うそを言っているのかと疑った。
間違っているのかと恐れた/心配した。
微妙に意味が違う
あの話を聞いて、本気かと疑った。 本気なのかと
思う、恐れる、考える、心配する、悩む、など。
▽この文型の条件は難しい。
疑問を感じる・疑問に思う などではどうか。
(tuzuku)
§58.2
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